スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン [本]

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図書館の新入荷コーナーにあった一冊です

言わずと知れたアップルの元CEO(最高経営責任者)で、テレビでも結構取り上げられてるので、知ってる人は多いかも…
「聴衆の心に強く訴え、印象に残るプレゼン」をするためのポイントがぎっしり詰まってます。

以下要約


●ストーリーを作る
最初からパワーポイントでスライドを作る作業をしてはならない。まず紙とペン(アナログな手段)で構想を練る。
そしてそのストーリーの根底にあるのは「聴衆の一番大事な問いに答える」ことである。
つまり「なぜ聴衆は自分の話に注目する必要があるのか」に答えられなければならない。

プレゼンは宗教の布教活動と似ており、問題提起(敵の出現)⇒解決策の提示(正義の味方の出現)⇒それによって得られる利益(ハッピーエンド)という3幕構成と考えるとよい。
唐突に「解決策の提示」=「商品紹介」からスタートしてしまうのは、カップを持っていない人にコーヒーを勧めるようなものである。

人間の脳は基本的に「怠け者」で、何かを理解するために苦労するのを嫌うものである。
文字をぎっしり並べた箇条書きのスライドなどは聴衆を退屈させるだけで、記憶に留めてもらえない。
一般的な人間が短時間に覚えられるのは3つか4つなので、シンプルで直接的な言葉を使い、ポイントは4つ以内(3が理想)に絞るべきである。

また、心理学の研究によると、どんなに綿密に用意された話でも人間が集中して耳を傾けられるのは10分まで。
1つのストーリーにつき、制限時間10分を厳守すること。11分ではなく10分で。

●体験を提供する
スライドは必ずシンプルかつ視覚に訴えかけるものにする。文字はキーワードの一言だけで十分で、あとは画像とトークで解説&補強すればよい。

また、文脈のない数値データは無意味。聞き手が想像しやすい喩えを用いてドレスアップし、イメージしやすくする。
「このiPodなら1000曲の音楽がポケットに入る」と言われればなるほどと思うが、「このiPodはデータの容量が5ギガバイトで…」なんて言われてもピンとこないのが普通。

そして業界の専門用語(ジャーゴン)は使わないこと。具体的で「びっくりするほどキレがいい」言葉を使おう。
初代iPodに音楽を転送する方法を説明したときのジョブズの説明は以下の通り単純明快。
「つなぐ。シューーン。おしまいだ」

以上のことを心がけるだけでも、聴衆に力強く「疑似体験」を提供できるが、そこに説得力と記憶に残るインパクトを持たせるには「お客様の声」や大手メディアの評価などを引用したり、小道具を活用するのが望ましい。
「お客様の声」や「大手メディアの評価」は説得力抜群で、そういう意味では顧客は第2の営業部隊と言える。クチコミに勝る販売促進ツールはないし、小道具はプレゼンを聞き手の心に記憶を長く留めてくれるのに大いに役立つ。

「言ったことなど忘れられてしまう。したことも忘れられてしまう。でも、感じさせたことが忘れられることはない-マヤ・アンジェロウ」

●仕上げと練習を行う
思っている以上に聴衆は話し手を観察しているもので、話し手が身にまとう印象はプレゼンの出来を大きく左右する。
声やしぐさ、表情などで自信や熱意を伝える必要があり、どれだけ刺激的な言葉を選ぶかだけでなく、同じくらいに話し方も大事である。

プレゼンは自然体でさりげなく、いかにも簡単なことをしているように見せよう。
もちろん、そのためには1日何時間もの練習を何日もこなさねばならない。
本番では話す内容はほぼ暗記し、カンペ(メモ)を見るのは最低限にすること。それができるようになれば、聴衆とアイコンタクトを取ったり、話に「間」や「抑揚」を持たせるなどの細かい演出もできる。

そして何よりプレゼンを楽しむこと。
どんなに準備をしても、本番になれば細かいミスはつきもの。そのような細かいことは気に病まず、失敗は失敗と素直に認め、ときにはそれをジョークのネタにして笑顔でさらっと流してしまえばよい。

「秘策などない。ビジネスの世界に従わなければならないルールなどない。私は今までと同じように一生懸命働くだけ、そして、自分には実現する力があると信じるだけだ。中でも特に大事なのは、楽しむことだろう-リチャード・ブランソン」






結構分厚い本ですが、よほど活字が嫌いじゃなければスラスラ読めるはず。
分かっているつもりで意外と分かっていない、「上手に伝えるためのポイント」が上手くまとめられてますし、プレゼン以外でも日常の中で役に立つ内容でオススメです。

僕は仕事柄現場での作業なので、スライドを使ってプレゼンをする機会は皆無ですが、後輩や異動してきたばかりの先輩に仕事を教える機会も多く、そういう意味ではどんな仕事も「毎日がプレゼン」なんでしょう。

特に最初の「ポイントを3つに」はいいですね。僕もそうやって教えてくれる先輩がいいなぁ♪


久々の更新なのでちょいと近況報告も…

最近職場では寿退社などで人数が減り、部署を異動する人もいてちょっとバタバタしてますw

6人いる部署内で、僕は今まで4番目に古株だったわけですが、No.3の先輩が寿退社し、No.2(副部門長)の先輩が来月から他部署へ異動。そして他部署から他の先輩が補充されるということで、事実上の副部門長になっちゃいます。


分かる人には分かりますよね?完全にこれがフラグだってことがww











二階級特進は死亡(殉職)確定のお約束ですにゃ…


というわけで、さらに更新速度が落ちるかもですが、今後ともよろしくですm(_ _)m
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配達赤ずきん 成風堂書店事件メモ [本]

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前記事で紹介した大崎梢氏の著書で、東京創元社から出版されてます

「書店の謎は書店員が解かなきゃ!」というキャッチコピーの短編集で、大崎さんらしい、不思議な安心感と爽やかな読後感が魅力です。

駅ビル内の書店、成風堂を舞台に、しっかり者の書店員・杏子と、勘のいいアルバイト店員・多絵のコンビが様々な謎に挑む新感覚のミステリです

以下あらすじ

第一話 パンダは囁く
「近所に住む老人に頼まれてた」という客が持っていたのは暗号めいた購入希望リスト。
一見意味不明のメモから、杏子と多絵はその老人の探している本とそこに込められたメッセージを推理する

第二話 標野(しめの)にて、君が袖振る
コミック「あさきゆめみし」を成風堂で購入した後、「あのとき見落としていたいたことに、今気づいたの」という言葉を残して失踪した母の行方を捜しに来た女性。
彼女は20年前に弟をひき逃げで喪っており、母の失踪はそれに関係があるのではないかという。杏子と多絵は「あさきゆめみし」を手掛かりに女性の足取りをたどる

第三話 配達赤ずきん
成風堂が美容院に配達したばかりのファッション雑誌に、美容院の常連客の盗撮写真がはさまれていた。盗撮された常連客は激怒、経営存続の危機に立たされた美容院を杏子と多絵は救えるのか…

第四話 六冊目のメッセージ
入院中に母親が成風堂で買ってきた5冊の本に元気づけられたという女性。本に詳しくない母親のために、本を選んでくれた男性店員にお礼が言いたいとのことだったが、あまりにも卓越した本選びのセンスに驚く杏子と多絵。他の同僚に聞いても誰も心当たりがなく、成風堂内に該当者はなし。もうすぐ田舎に帰ってしまうというその女性は「謎の書店員」に会えるのか…?

第五話 ディスプレイ・リプレイ
美術好きのアルバイト店員・夕紀の希望で、出版社が主催する販促キャンペーンに参加することになった成風堂。人気コミック「トロピカル」の売り場に、見事な手作りディスプレイを完成させ喜ぶ杏子たちだったが、完成直後、何者かがディスプレイに黒いスプレーをかけて台無しにしてしまうという事件が起こり…



感想
事件そのものは大したものじゃないので、主人公が一般人でも不思議とリアリティがあって面白かったです
第二話の結末は意外だったなぁ…てっきり、ひき逃げ犯を特定する手がかりを見つけたのかとw

しかしどの話でも、心温まる結末がいいですね~♪

推理小説としての筋もしっかりしてるので、大人が読んで楽しいのはもちろん、中・高校生にも安心してオススメできる一冊です^^

短編集なので時間に余裕のない人でも、ちょっとした時間を利用すればすらすら読めるはず…


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○耳○○○ [本]

設問1.記事タイトルの○に適当な文字を入れて、記事タイトルを完成させなさい








はい、『猫耳メイド』だと思ったそこのあなた!







立派な変態です(・∀・)b←








正解はこちら↓
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『片耳うさぎ』 大崎梢著 光文社


表紙のデザイン通り、どちらかと言えば「のほほん系」のミステリー小説です

借りたきっかけは、もちろん某ぽぽ○ぽ~んのCM(二次創作含む)で洗脳され、「うさぎ」「ワニ」「ライオン」「マンボウ」「スカンク」「うなぎ」などの動物に過剰に反応する体質が…(以下自重


あっ、まだブラウザの[戻る]は押さないで~!

…アホなこと言ってないでさっさと本題に入れってことですね、わかりますwww


でわでわ、以下あらすじwww

小学校6年生の蔵波奈都(くらなみなつ)は父親の経営する会社の倒産で、父の実家に引っ越してきた。

広大な屋敷や厳格な伯母に馴染めない奈都だったが、ある日母方の祖母の持病が悪化したため、奈都は一人で(親戚はいるが)留守番をする羽目になる。

そこで同級生の「ねえちゃん」である、古い屋敷が大好きで、美しく礼儀正しい中学3年生のさゆり(初対面w)が家に泊まってくれることに。

好奇心旺盛なさゆりに引っ張りまわされ、屋敷の探検に付き合わされる奈都だったが、探検をするうちにこの家に伝わる謎めいた言い伝えや過去の事件のことを知る。

しかも、どうやらそれらの謎を解くカギはこの屋敷のどこかにある、伯母でさえもその所在を知らない「隠し部屋」に眠っているらしい。

蔵波家をめぐる騒動で2人の女の子が大活躍(大暴走含む)する「のほほん系」ミステリー




感想

ミステリー小説ですが、主人公が凶悪な事件に首をつっこむわけではなく、登場人物から死人が出ることもないので、読んでいて「不思議な安心感」があります(笑)

広いお屋敷の納戸や屋根裏の冒険というのも、童心に帰れるというか、なんかワクワクさせてくれますね。

読みながら、子供の頃実家の屋根裏に上ったことを懐かしく思い出してました。
まあ、理由は謎解きじゃなくてネズミ退治なんですけどねww(; ̄_ゝ ̄)

「のほほん系」ミステリーと書きましたが、ストーリーのテンポは速いですし、意外な結末にはいい意味で裏切られると思います。
個人的にはこういう小説もすごく好きなんですけど、東野圭吾や沢木冬吾が好きな人にはあまりオススメできないかな…(^^;)

最後まで読んでくれてありがとウサギ!←

BGMはsupercellで「Perfect Day」をどうぞ♪

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凍花 [本]

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来月は「父の日」ですね[わーい(嬉しい顔)]
だからというわけではないですけど、今回紹介する本は「家族」について考えさせられるものです。

先日読み終わりましたのでいつも通りまとめます[ペン]

「凍花(いてばな)」著者:斉木香津 発行所:双葉社(2010年10月)

「私は妹を殺しました」 近所でも美人三姉妹と評判だった姉妹の長女が、自室で次女を殺した。 しかも凶器は、次女と三女から誕生日のプレゼントにもらったばかりのアイロンだった。 長女はすぐに自首するものの、動機など事件の詳細については一切黙秘したまま。 「自分が知っている姉」とかけ離れたその事実を受け入れることができず、三女は改めて姉を真に理解すべく交友関係などを探り始めるが、たまたま見つけた姉の日記には自分たち家族を含めた周囲の人間に対する憎しみが綴られていて…



家族のことって、一番身近な存在であるだけに、普段は当たり前のように「分かっているつもり」になってることが多いかと思いますが、意外と知らないこと、理解していないことってあるんじゃないでしょうか?

人間関係というのは家族・他人を問わず、結局はその人に対する「イメージ」ですし、それが自分の勝手な解釈の産物でないという保障はどこにもないと思います。

先入観を捨てて人と向き合うのは容易ではありません。
真実を知ることも、時にすごく勇気のいることです。

でも、お互い気心が知れていると思っている人に対しても、ときどき自分の「イメージ」を疑って、違う角度から向き合ってみるのも大切なのかもしれませんね。

BGMはスガシカオの「7月7日」をどうぞ



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草食系男子の取扱説明書(トリセツ) [本]

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図書館の新入荷コーナーに置いてありました

「あの人は○○系っていうレッテルを貼って、その人について知ったつもりになるのはいかんなぁ…」と思いながらも、なんとなく手に取ってパラパラページをめくってみたら、結構笑える内容だったので借りてきましたww

内容としては、ほとんどチェックリストですね。

いくつか笑いのツボに入った項目があったので抜粋します

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☑面倒や争いごとは避けたいほう

☑だから石橋を叩いて渡るほう

でも叩いておいて渡らないこともある

☑バブルの記憶?ぼんやりしかない

ジュリアナ?NHKの「資料映像」で見た

ナンパなんて絶対無理

☑最初は「私がリードしてあげる」って言われた

のに、半年後には「頼りない」って怒られた

☑デパ地下スイーツにも結構詳しい

☑メタボ?あり得ない

すいません、箱入り息子なんで

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「草食系男子」は最近になって使われるようになった言葉ですが、「ガツガツしてない」「頼りない」「平和主義」「甘党」「堅実」などと個別にその要素を見ていけば、そんなに目新しいものでもないのかな?

ただ、高度経済成長が終わり、バブルが崩壊した現代において、男女問わず安定志向の日本人が多くなるのは当然か…

どこの国でもそうですけど、社会が成熟してくると学歴が将来の収入をそれほど大きく左右しなくなるので、学生時代からあまりガツガツする習慣が身に付かないのも大きいでしょうね。

強い意思表示などがなく、古風な「男らしさ」に乏しいゆえに誤解もされがちな「草食系男子」ですが、基本的に害はないですし、優しい気質の持ち主でもあります。

「草食系男子」は時代のニーズの産物であり、同時に協調性を重んじる日本の伝統の産物でもあるのでしょう。

彼らには頼りない面は多々あるでしょうが、見捨てずに長い目で見てやってください^^;
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これからの正義の話をしよう [本]

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久々の記事更新ですが、また本の話題で書かせていただきます[本]

「これからの正義の話をしよう」はハーバード大学のマイケル・サンデル教授の講義「Justice(正義)」の講義で扱っていることを抜粋してまとめたものです。

私たちは何を「正しい」と感じて支持や称賛をし、何を「間違っている」と感じて批判や忌避をするのか。またそれはなぜそう感じるのかについて分析し、カントやロールズ、アリストテレスなどの哲学者たちがそういったテーマにどのように挑んできたかを紹介しながら、「正義とは何か」について読者と一緒に考察しています。


ざっとその内容と感想をまとめます[ペン]


①「暴走する路面電車」

あなたが路面電車の運転手だったとする。走行中にブレーキと警笛が故障し、列車が暴走してしまい、前方の線路上では5人の作業員が列車の接近に気付かずに作業をしている。 しかし脇に逸れる線路があり、その先では1人の作業員が作業をしている。 5人か1人か、どちらかを確実にひき殺してしまう状況で、あなたは路面電車の進路をどちらに向けるだろうか?

この問いに対しては多分「1人をひき殺す」を選ぶ人が多いかと思います。
その選択をした人は、失われる(助かる)命の「数」を比較し「1人<5人」という結論を出しているわけですが、では以下の場合はどうでしょうか?

あなたが暴走する路面電車を橋の上から見ていた場合です。あなたが何もしなければ5人の作業員は轢かれてしまいますが、あなたのとなりに大柄な男性がいて、その人を線路の上に突き落せば路面電車を止められるとすれば、あなたは5人の作業員の命を救うためにその男性を突き落しますか?

前の問いで「1人の作業員をひき殺す」と答えた人は、その原則に則るならこの状況でも「男性を突き落す」ことを選択するべきでしょう。
「1人が死んで5人が助かる」という結果は同じですし、命の「数」が判断の基準になっているのですから、本質的にも何ら変わりはありません。

ところが、実際には第2の問いでは「突き落す」を選択する人の割合は、第1の問いで「1人をひき殺す」を選択する人よりも少なくなります。

第1の問いと第2の問いであなたの出した答えが違うとすれば、それはいったいなぜでしょうか?



②「自分は自己の所有者か」

私たちは自分自身が自己の生命や財産、権利や尊厳の所有者であると定義してよいでしょうか?
もしそうだとすれば、他人のそれを侵害しない限り、自分のことはすべて自分で決めてよいし、その結果に対して責任を負っていれば何ら問題はありません。

一見その自由主義の原則は筋が通っており、正しいように見えますが、現実に存在する法律や慣習はそれと矛盾していることが多々あります。

たとえ双方が同意をしていて、なんの不利益も被っていなかったとしても、売春をしたり、腎臓の片方を売ってお金を得たりすることは禁止されているし、それを容認することを正しいと思う人はいないでしょう。 また、自分で働いて稼いだお金も全て自分のものになるのではなく、実際には税金という形で強制的に一部を接収されています。 「他者に迷惑をかけない限り自分のことは自分で決める」という自由主義の原則を当てはめるなら、売春や臓器売買、自殺ほう助などは個人の自由であり、一方でその使い道に拘わらず、あらゆる税金は個人の自由と権利を侵害する「悪」ということになります。

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ほんの一部を抜粋&要約しただけですが、①と②を通して「見えてくる共通のもの」があると思います。

それは、「人は単なる個人としての存在だけでなく、社会(共同体)に組み込まれた存在である」ということ

なぜ、5人を助けるためであっても、1人の男性を線路に突き飛ばすことを「正しくない」と感じるのか、たとえそれが誰かの命を救う結果になるとしても、臓器を売買することはなぜいけないのか?

それはどちらも人の生命や尊厳を「結果を得るための手段(モノ)」としてしか扱っておらず、「お互いを尊重し合う」という共同体としての理念が欠如しているから。
そのような人に対する敬意を欠いた判断基準は、得られる結果に拘わらず、私たちに受け入れ難いものであるとのこと。
どうやら私たちは結果だけではなく、動機や方法によっても善悪を判断しているようです…

税金に関しても、努力を含めた自身の能力で正当に得られた収入であっても、それはその才能を持って生まれたことやそれを高く評価してくれる社会・時代に生かされているという「運の良さ」が多々あるわけで、高所得者に余分に課税してその辺の「格差」を是正するのは「不公正」とは言えないと。


なるほど…Σ(゚д゚)ゝ
脳科学者が言うには、努力できるかどうかも「才能」に因るところが大きいらしいですが、個人的にはその他の才能とは分けてほしいかなぁw

前述の「動機」に関してはもっと分かりやすい例えがありますね。
私がこうして読んだ本のことをブログに書いていることを例に挙げましょう。

ブログの文章がすべて同じだったとしても、私が「その本を紹介することが自分や読んだ人にとって有益であると考えているから」という動機で書いているのか、あるいは「知的路線をアピールして異性にモテたいから」という動機で書いているのか(笑)

文章は全く同じで、(微々たるものですが)社会的に与える影響も変わらないとしても、その評価に動機の差は関係がないでしょうか?

本についてブログを書くことは、どちらかといえば「良いこと」の部類に入るかもしれませんが、動機が後者の場合、「奨励はされても称賛すべきではない」という評価が妥当なところですね。

ちなみに私は単純に本が好きで、本の話題で誰かと交流ができればもっと楽しいかな~っていう動機で書いているだけなので、「立派だな~」とか思っちゃいけません(笑)
ダメ 絶対(ぉぃ


この本ではあくまでも人の価値観は「十人十色」であるということを前提にしており、特定の考え方を押し付けるようなものではありません。

ですが、少なくとも「自分は何を正しいと思うのか、またそれはなぜか」について考えるくらいのことは必要で有意義なことではないでしょうか?


路面電車云々以外にも興味深い話がたくさん載ってますので、興味のある方は是非☆
タグ:読書 哲学
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鬼に捧げる夜想曲 [本]

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読み終わったので記事にします_φ(。。;)


神津慶次郎氏が20歳の若さで書き上げ、最年少で第十四回鮎川哲也賞を受賞した作品です
話の内容とは関係ないですが、神津さんが私と1歳しか違わないので、ちょっと親近感を感じてしまいました^^;


「鬼に捧げる夜想曲」は閉鎖的な離島で起こる、凄惨な殺人事件を描いた推理小説です


以下あらすじ↓

昭和二十一年三月十七日、乙文明(おとふみあきら)は戦友の神坂将吾の祝言に出席するため、九州大分の沖合に浮かぶ満月島にやってきた。

しかしその翌日、祝言を挙げた新郎新婦が密室で惨殺されてしまう。

乙文は戦友の仇を討つべく、大分県警から派遣された兵堂善次郎警部補、そして名探偵藤枝孝之助とともにこの不可解な事件に挑むが…






以下感想↓

事件vs名探偵のベタなジャンルですが、密室やアリバイトリックの構想はかなり頑張っているなと思います。

ただ、20歳の若さで書いただけに、文章全体の荒削り感は否めません…

ストーリー的には犯人の追求の際、ちょっと憶測に頼る部分が多すぎることや、犯人がそれであっさり自白してしまうのがちょっと不満www

まあ、そのあたりは目をつぶってもいいと思いますが、個人的に一番気になったのは犯人の「動機」ですね。


強い殺意を持って行われた殺人で、3人も殺害される展開ですから、犯人にとってそうせざるを得ない「差し迫った事情」があるものだと思っていましたが、意外とそうでもないww(´・ω・`)


狡猾なトリックを用意している割に、妄信や精神異常のような要素が動機に含まれるのが違和感の原因かと。


いろいろツッコミは入れてしまいましたが、今後に期待をさせてくれる作品だったので「鬼に捧げる夜想曲」以降の作品もチェックしておこうと思います[目]
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農民国家 中国の限界 [本]


前記事と順番が逆になってしまいますが、1か月程前に読んだ本です
本自体は1か月前に図書館に返却してしまったので、記憶を頼りに、しかも酔っぱらいながら書いてます(殴
なので多少の誤字・脱字等はご容赦ください(蹴

筆者の川島博之氏は工学博士であるため経済学は専門外だそうですが、農村からの出稼ぎ労働者「農民工」に焦点を当て、中国の抱える社会問題について丁寧に解説してくれる良書です

以下、いつも通り要約&追記します


先日、中国のGDPが日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第2位になったとの報道がありましたが、国民一人当たりのGDPはまだ3000$を超えたばかりで日本の経済水準には遠く及びません。(日本はIMFの発表では約42000$)

しかも中国経済は不動産投資がGDP全体の40%以上を占めているという完全な「不動産バブル」の状態にあります。

ここで重要なのは中国が共産主義国で、個人の土地の所有を認めていないということです。

日本では高度経済成長やバブルの時、自民党政権は地方にもたくさんの公共事業をばらまき、土地の値段が大幅に上がりました。
これによって僅かな土地しか持たなかった貧しい農民でも、その土地を売ることによって一夜にして金持ちになることができたわけです。

田中角栄首相の「日本列島改造論」から始まったこの政策は、都市と地方の格差是正に大きな役割を果たしたと言えます。

しかし、共産主義の中国は「土地の私有」を認めていないのでそうはいきません。
40年~80年の土地の「使用権」が借りられるだけです。
なぜか中途半端に資本主義が導入されており、当然のことながら都市部の方が地方より「使用権」の値段は高く、開発によって値上がりもします。

中国の土地開発は地方政府の役人が決め、土地開発公社(公営企業)が独占して行うシステムです。
一部の特権を持った人間が地価をコントロールし、その利益を独占するのですから当然不動産関係は汚職だらけの業界となり、固定資産税が存在しないことも相まって、特権を持った人間やその周辺の人間と「その他大勢」の農民との格差は広がる一方です。

皮肉なことに「貧困のない平等な社会」を目指した共産主義国家は、今やアメリカを上回る「格差国家」となってしまいました。(経済格差を表すジニ係数は、アメリカが4.2で中国が4.7)


もちろん中国でも、経済発展(工業化)に伴う都市と農村の格差拡大に無関心だったわけではありません。

毛沢東の「文化大革命」も単なる権力闘争だけでなく、格差是正のための試みでもありました。
ただしやり方が田中首相と真逆であり、田中首相が農村にカネをばらまくという手法を選んだのに対し、毛沢東は都市に住む人間(特に高所得の知識人)を弾圧して農村に追放するという過激な手法を用いました。

もちろん都市の人間を農村に追いやったところで、農村が豊かになるわけもなく文革は多くの死人を出しただけで失敗に終わっています。

また、今の中国の発展は、文革で共産党が富裕層から没収した不動産をはじめとする莫大な資産を原動力に再始動しているとも言えるのです。
(文革がなければもっと早く発展していたわけですが…)



国家が急激な経済成長をするとき、需要の変化に乏しい農業がその原動力になることはまずありません。
必ず国家の近代化は「工業化」によって行われます。

工業が発達する際、必要な労働力はまず農村から供給されるわけですが、農村に無尽蔵に労働者がいるわけではありません。

農村からの労働力の供給が限界を迎えたとき、低賃金の労働者の人件費は急激に上昇し始めます。これを「ルイスの転換点」と言います。

日本では高度経済成長期に地方から上京してくる若者を「金の卵」と呼び、大事に育ててきました。
日本は最も労働者を大切にし、高度な技術を武器に健全な経済成長を遂げた国家です。

中国は文革や大躍進政策の失敗と、共産主義というシステムの欠陥ゆえに資本主義国に大きな後れを取ってしまい、高度な技術も持てず、「ルイスの転換点」を過ぎても労働者の人件費を抑える政策を取り、「安い人件費」だけを武器に「世界の工場」を続ける以外に経済発展をする手段がなかったのです。



現在中国に関する本は多数出版されており、大国説から崩壊説まで内容は色々です。
川島氏はその辺の結論は現時点では出せないと述べています。

私もそこは同じ考えです。

確かに中国経済は危険な状態にありますが、アフリカや中東よりもはるかに「教育」に力を入れていますし、役人の保身のためとはいえ、格差の是正や技術のパクリ育成にも熱心ですからね。

最近になってやっと賃金が上昇し始めたそうですが、賃金が上昇すれば「世界の工場」ではいられませんから、あとは日本のようにスムーズに内需国家に移行できるかどうか…

多数の民族・言語・文化の寄せ集めで、中途半端に共産主義と資本主義が混在するような国の将来なんか、素人の私じゃ全然予想ができませんwww

どちらにせよ、日本が大きな不利益を被ることなく、こうして呑気にブログが書ければ良しと思っちゃうのは私だけですか?(笑)

やたら長い文章になりましたが、なぜか「まひるの月を追いかけて」のあらすじをまとめるよりもこちらの方が簡単に感じましたwww
小説を読んで理解するって難しいですね(笑)

復路で読んだ本 [本]

前記事での予告通り、復路で読んだ本をご紹介させていただきます

恩田陸「まひるの月を追いかけて」


恩田陸さんの作品を初めて読んだのは高校生の時です。
作風を抽象的に表現するなら「暗雲に覆われた強風の吹き荒れる草原で、一人で立ちつくしてる」ような感じでしょうか。

独特な世界観や抒情的な文体がお気に入りで、よく読む作家の一人です

「まひるの月を追いかけて」あらすじ
静は失踪した異母兄の研吾を探すため、彼の恋人の君原優佳里に頼まれて一緒に奈良へ向かう
旅の途中、どこかで必ず研吾は現れるという

明かされる研吾や優佳里、静の微妙な人間関係、「旅行」という非日常の物語の中で静が演じなければならない「役割」とは…?


古の都を舞台に、複雑な人間の心理を描き出す長編です。

アクション映画のような派手さはありませんが、ひとつひとつの言葉選びや表現、世界観は秀逸です

「誰かと一緒にただ歩く」という非日常、「少人数」というある種の密室状態の中で展開するストーリーは「ネバーランド」や「夜のピクニック」、「麦の海に沈む果実」などの作品とも共通しており、恩田さんの特徴がよく出ている作品と言えるでしょう

ところで、私が奈良に行ったのは中学校の修学旅行のときだけです

今以上のアホだった当時は、奈良の持つ歴史の重みやその素晴らしさを十分に理解することなどできず、''「なんか大胆な鹿がいるww」''くらいの記憶しか残ってませんが、この作品を読んでもう一度奈良を歩きたくなりました

初夏を迎えるころに行ってみようかな


本の好みは人それぞれですが、上に挙げた他の作品と一緒に「オススメ本」としてプッシュしておきます

3年目研修 [本]

会社の3年目研修ということで、神奈川県に出張してましたwww

というわけで、移動中''電車の中で読んでいた本についての記事''を書きます←殴

往路で読んだ本↓


NHKの土曜ドラマをノベライズしたものだそうです。

「故郷が破綻するとき、私たちは何を守るのか」

大阪府の架空の町「なみはや市」の危機的な財政状況が明るみになり、財政再建のためのプロジェクトチームが結成され、主人公がそのチームに抜擢されて奔走するというストーリーです。

政府や自治体の抱えている問題というのは、某与党の「コンクリートから人へ」などという短絡的なイデオロギーで解決するようなものではありません。

一見無駄と思えるような公共事業でも、それがないと最低限の生活すらできない人がたくさんいて、地域を潤している側面はあります。
もちろんそれを利用する政治家がいたりするのも事実ですが…

「再生の町」は「町」の再生の物語でもあり、主人公を含めた「人間」の再生の物語でもあります。

電車に揺られながら読んでいて、ラストでは思わずウルッと来ちゃいました。
最近読んだ小説の中でもかなり心に響いた一冊です

ET-KINGの「さよならまたな」をどうぞ♪


次回は復路で読んだ本をUPします


追伸:暖かくなってきたので、ブログの公開範囲を元に戻しました

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