農民国家 中国の限界 [本]


前記事と順番が逆になってしまいますが、1か月程前に読んだ本です
本自体は1か月前に図書館に返却してしまったので、記憶を頼りに、しかも酔っぱらいながら書いてます(殴
なので多少の誤字・脱字等はご容赦ください(蹴

筆者の川島博之氏は工学博士であるため経済学は専門外だそうですが、農村からの出稼ぎ労働者「農民工」に焦点を当て、中国の抱える社会問題について丁寧に解説してくれる良書です

以下、いつも通り要約&追記します


先日、中国のGDPが日本を抜いてアメリカに次ぐ世界第2位になったとの報道がありましたが、国民一人当たりのGDPはまだ3000$を超えたばかりで日本の経済水準には遠く及びません。(日本はIMFの発表では約42000$)

しかも中国経済は不動産投資がGDP全体の40%以上を占めているという完全な「不動産バブル」の状態にあります。

ここで重要なのは中国が共産主義国で、個人の土地の所有を認めていないということです。

日本では高度経済成長やバブルの時、自民党政権は地方にもたくさんの公共事業をばらまき、土地の値段が大幅に上がりました。
これによって僅かな土地しか持たなかった貧しい農民でも、その土地を売ることによって一夜にして金持ちになることができたわけです。

田中角栄首相の「日本列島改造論」から始まったこの政策は、都市と地方の格差是正に大きな役割を果たしたと言えます。

しかし、共産主義の中国は「土地の私有」を認めていないのでそうはいきません。
40年~80年の土地の「使用権」が借りられるだけです。
なぜか中途半端に資本主義が導入されており、当然のことながら都市部の方が地方より「使用権」の値段は高く、開発によって値上がりもします。

中国の土地開発は地方政府の役人が決め、土地開発公社(公営企業)が独占して行うシステムです。
一部の特権を持った人間が地価をコントロールし、その利益を独占するのですから当然不動産関係は汚職だらけの業界となり、固定資産税が存在しないことも相まって、特権を持った人間やその周辺の人間と「その他大勢」の農民との格差は広がる一方です。

皮肉なことに「貧困のない平等な社会」を目指した共産主義国家は、今やアメリカを上回る「格差国家」となってしまいました。(経済格差を表すジニ係数は、アメリカが4.2で中国が4.7)


もちろん中国でも、経済発展(工業化)に伴う都市と農村の格差拡大に無関心だったわけではありません。

毛沢東の「文化大革命」も単なる権力闘争だけでなく、格差是正のための試みでもありました。
ただしやり方が田中首相と真逆であり、田中首相が農村にカネをばらまくという手法を選んだのに対し、毛沢東は都市に住む人間(特に高所得の知識人)を弾圧して農村に追放するという過激な手法を用いました。

もちろん都市の人間を農村に追いやったところで、農村が豊かになるわけもなく文革は多くの死人を出しただけで失敗に終わっています。

また、今の中国の発展は、文革で共産党が富裕層から没収した不動産をはじめとする莫大な資産を原動力に再始動しているとも言えるのです。
(文革がなければもっと早く発展していたわけですが…)



国家が急激な経済成長をするとき、需要の変化に乏しい農業がその原動力になることはまずありません。
必ず国家の近代化は「工業化」によって行われます。

工業が発達する際、必要な労働力はまず農村から供給されるわけですが、農村に無尽蔵に労働者がいるわけではありません。

農村からの労働力の供給が限界を迎えたとき、低賃金の労働者の人件費は急激に上昇し始めます。これを「ルイスの転換点」と言います。

日本では高度経済成長期に地方から上京してくる若者を「金の卵」と呼び、大事に育ててきました。
日本は最も労働者を大切にし、高度な技術を武器に健全な経済成長を遂げた国家です。

中国は文革や大躍進政策の失敗と、共産主義というシステムの欠陥ゆえに資本主義国に大きな後れを取ってしまい、高度な技術も持てず、「ルイスの転換点」を過ぎても労働者の人件費を抑える政策を取り、「安い人件費」だけを武器に「世界の工場」を続ける以外に経済発展をする手段がなかったのです。



現在中国に関する本は多数出版されており、大国説から崩壊説まで内容は色々です。
川島氏はその辺の結論は現時点では出せないと述べています。

私もそこは同じ考えです。

確かに中国経済は危険な状態にありますが、アフリカや中東よりもはるかに「教育」に力を入れていますし、役人の保身のためとはいえ、格差の是正や技術のパクリ育成にも熱心ですからね。

最近になってやっと賃金が上昇し始めたそうですが、賃金が上昇すれば「世界の工場」ではいられませんから、あとは日本のようにスムーズに内需国家に移行できるかどうか…

多数の民族・言語・文化の寄せ集めで、中途半端に共産主義と資本主義が混在するような国の将来なんか、素人の私じゃ全然予想ができませんwww

どちらにせよ、日本が大きな不利益を被ることなく、こうして呑気にブログが書ければ良しと思っちゃうのは私だけですか?(笑)

やたら長い文章になりましたが、なぜか「まひるの月を追いかけて」のあらすじをまとめるよりもこちらの方が簡単に感じましたwww
小説を読んで理解するって難しいですね(笑)
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kaze_kaoru_10

温玉さん

初めまして、少し驚いています、読んだ本のまとめ方が良いというか、わかり易く私の頭に入ってきました。
「農民国家中国の限界」
著者の川島博之氏とはどのような人かは少し説明が有りましたので経済学者ではなく工学博士との紹介、簡潔です。

私は去年尖閣諸島問題が起きてから中国とは?どんな国
などとのんきな思いで居りましたが、石平氏、黄文雄氏、呉善花氏の著書に触れ、頭を100発位殴られた思いがしました。
ただ、自分なりに理解していても、他の人に簡潔に説明するのは出来ません。

すばらしい解説です。私も見習いたいと思ったしだでした
長々とすみません、又寄らせてもらいたいと思います
by kaze_kaoru_10 (2011-03-07 02:25) 

温玉

【kaze_kaoru_10さん】
はじめまして。ご訪問&コメントありがとうございます[嬉しい顔]
ほろ酔い状態で書いた記事に、お褒めの言葉を頂けるとは思っていなかったので、正直驚いてます(笑)

記事では省略しましたが、川島氏は中国が将来食糧輸入大国になるのかということや、学生の受験戦争についても触れており、マクロな視点から中国を理解する上で大いに参考になる一冊だと思いますよ[本]

またのご訪問、お待ちしておりますm(_ _)m
by 温玉 (2011-03-07 19:57) 

温玉

【ぷにょさん、たかぴさん、mainamiさん、TAMAさん】
[ハート][ハート][ハート][ハート]ありがとうございます
by 温玉 (2011-03-10 21:21) 

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