豚ログシリーズPart11 環境部門編 [豚ログ]

ご訪問ありがとうございます。久しぶりの豚ログです。
今日は農場を陰で支える「環境部門」について紹介させていただきます。
私自身、まだ未経験の部署で勉強不足は否めませんが、勉強会等で学んだことを頑張って書こうと思います

初めて豚ログを御覧頂く方へ

プロフィールの通り、私は養豚場で働いています。現在2年目の社員として種付部門で奮闘中です。
「豚ログ」は養豚場の仕事について紹介させていただくシリーズです。
シンプルにまとめようと努力はしているのですが、結局毎回長文になってしまってます

過去の主な豚ログです。よかったら御覧ください。
種付部門編

肥育部門編

食肉加工編

流通編

農場HACCP編

バイオセキュリティ編

待遇編

番外編


まず、環境部門の概要ですが、その仕事は主に「堆肥処理」と「排水処理」の2つに分けられます。
それぞれについて以下で大まかな説明をさせていただきます。

堆肥処理


堆肥処理では豚の糞を堆肥(肥料)にしています。
私の勤める養豚場では、豚舎は東西に細長く、床はスノコ張りになっていて糞尿は「ピット」と呼ばれる床下に落ちます。
ピットは東西のどちらかに傾いており、仮に東が低く西が高いと尿(液体)は東に向かって流れていきます。
同時に「スクレーパー」と呼ばれるブルドーザーの爪のような装置が糞を尿とは逆方向に押して回収していき、この時点で液体と個体がある程度分離されるのです。

回収された糞はダンプカーの荷台に積みこまれて「コンポ」という場所に集められて堆肥化します。「コンポ」ではロータリー(棒に風車みたいなやつがたくさんついてる)が回転して糞をかき混ぜ、空気を送り込んで発酵を促します。

「コンポ」ってこんな設備です↓


発酵が進み、堆肥化された糞は粒の大きさごとに選別され、JA(農業協同組合)を通じて近隣の農家に販売されています。


排水処理


ピットから流れてきた排水は、地下の配管を通って環境部門に集まってきます。
ある程度分離したとはいえ、まだ糞が混ざって真っ黒に濁った状態です。
なので、まずスクリーンと呼ばれる大きなザルで大きな汚れの粒を取り除きます。
でも、それだけでは処理を始めるには不十分です。
なので、今度は「塩析(えんせき)」という現象を利用して汚れを除去します。

塩析とは、水に溶けている大きな粒子(コロイドという)が、イオンによって析出する現象です。

分かりやすく実演しちゃいましょう

まず、せっけん水を用意します。


水に溶けているせっけんを排水に含まれる糞だと思ってください。
ここに塩を入れると…

水とせっけんが分離します

水には塩のような単純な物質を優先的に溶かし込む性質があるのです(・・)b
農場ではより環境への影響が少ない「塩化鉄」を使っています。(鉄はその辺の石ころにいくらでも含まれてるので)

こうしてさらにゴミを取り除かれた排水は、いよいよ微生物によって浄化されます。
水槽で金魚を飼うときに使う、エアーポンプのオバケ(ブロワー)が空気を送り込み、微生物の活動をバックアップしてくれます。

バイオパワーで汚れを分解し、完全にきれいになった排水は、窒素やリンの濃度が国の定める環境基準を満たしていることを確認した上で、河川に放流されます。



いかがでしたでしょうか?環境部門は直接豚を利益にする部署ではありませんが、養豚場の経営において、適切な糞尿処理は「商売をする上で守らなければいけないルール」です。

養豚場には繁殖は行わず、仔豚を他の農場から買って育てているところがあります。同様に、繁殖だけを行って仔豚の育成を他の農場に一任しているところもあります。
しかし、それとは無関係に豚を飼育する以上、全ての農場で糞尿の処理は必ず行わなければなりません。

環境部門はひたすら機械とにらめっこする地味な部門ですが、養豚場の中で「唯一他の農場に委託できない部門」なのです。


短くまとめようとしましたが、結局今回も長文になってしまいました
読んでいただけた方、お疲れ様です。ありがとうございました
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コメント 33

mainami

排水処理は一般的な浄化槽ではないんですね…
全部、微生物にお願いしていると思いました!
by mainami (2009-12-29 01:10) 

たかぴ

化学の実験みたい!!
by たかぴ (2009-12-29 01:12) 

温玉

【mainamiさん】
ここでは省略させていただきましたが、役割別に全部で10種類の浄化槽があるのです。
微生物だけに頼ろうとすると、処理が追いつかないのです。
by 温玉 (2009-12-29 01:14) 

温玉

【たかぴさん】
今回は「化学」が関係する話題だったので、実演もやってみました。楽しんでいただければ幸いです[嬉しい顔]
by 温玉 (2009-12-29 01:20) 

デンスケ

完全に解ったなどとは言えませんが、とても解り易く書いて下さったので、興味深く読ませて頂きました。
勉強になりました┏| ̄^ ̄* |┛
by デンスケ (2009-12-29 03:02) 

ドルチェビータ

豚ときいたら、生ハム、サラミしか思いつかない私ですが、
豚の飼育には、他にも仕事がたくさんあるのですね。勉強になりました。(^_-)-☆
by ドルチェビータ (2009-12-29 03:30) 

ゆうてん

なんだか、懐かしい言葉のオンパレードです。[嬉しい顔]

私は豚ログを読むとついつい質問してしまう癖になっているようです。(楽しみでもあります)
石鹸水の実験は、過去の記憶の糸をたどっていくと理解できそうなのですが、もっとも知りたい点がございます。

排水処理の中には、大腸菌などの細菌群の処理あろうかと思われます。
その処理はどのように行われているのでしょう?

私のイメージでは、プールに投入していた白い固形物(次亜塩素酸カルシウム?)を思い出します。

あれって、目が「うさぎ」になりませんでした?
私は、目は赤く、唇は紫、水着はオレンジとカラフルでした。
by ゆうてん (2009-12-29 03:39) 

温玉

【デンスケさん】
ありがとうございます。分かりにくい点などございましたら、がんがん追及しちゃってください。
by 温玉 (2009-12-30 19:46) 

温玉

【ドルチェビータさん】
本場ヨーロッパの畜産加工品はさぞ美味しいでしょうね。
イベリコ豚の生ハム食べてみたいです[複数のハート]
[ハート]&コメありがとうございました[嬉しい顔]
by 温玉 (2009-12-30 19:51) 

温玉

【ゆうてんさん】
またまたいいところを突かれてしまいました[嬉しい顔]

お答えします。微生物による処理が済んだ排水は、逆浸透膜と呼ばれるフィルターでろ過されるのです。
0.4ミクロンの穴が開いた膜で、排水の側から浸透圧を上回る圧力をかけて「逆浸透」を行います。
これによって細菌などは残らず除去されます[ぴかぴか]

排水処理がきちんと行われているか、時々役場の方が抜き打ち検査をしにやってきます。
by 温玉 (2009-12-30 20:00) 

温玉

【よーすけさん、ケロミさん、ぷにょさん】
[ハート][ハート][ハート]ありがとうございます
by 温玉 (2009-12-30 20:41) 

ドルチェビータ

温玉さん

11月に一時帰国した際、日本のあちこちで『イベリコ豚』使用というのが書いてあったのですが、スペイン中の豚が日本に輸出されたって感じでした。ちょっと信用できないなとおもいました。生ハムはスペインのも美味しいですが、イタリアはパルマ産のとろけるような生ハムが、私は好きです。一番美味しいのは、パルマでしか売っていないようですけどね。
(^_-)-☆
by ドルチェビータ (2009-12-30 21:17) 

温玉

【ドルチェビータさん】
イベリコ豚“使用”っていうのがポイントですね。少しだけイベリコ豚を混ぜて、他はアメリカ産とかかもしれません。
「イベリコ豚100%使用」と表示していれば別ですけど。

パルマ産の生ハムが最高なのですか。是非食べてみたいです。
私の勤める会社では、ハム・ソーセージの加工もやっているのでドイツでの研修があるようですが、イタリア研修も追加すればよりよい商品の開発につながるかもしれませんね。
by 温玉 (2009-12-30 21:31) 

ドルチェビータ

温玉さん

生ハムは、パルマ産のが最高だと思います。ハムの芸術って感じです。サラミも美味しいですよ。トスカーナ地方には、
イノシシのサラミやソーセージもあって、なかなかワイルドな味で、料理にもよく使われます。イタリア研修、あればいいですね。しかし、残念ながら生ハム製造の肝心な部分は、何百年もの伝統的な企業秘密ですので、教えてはくれないでしょうね。日本産の生ハムを食べてみましたが、味は違っていました。(-_-;)
by ドルチェビータ (2009-12-30 21:43) 

温玉

【ドルチェビータさん】
企業秘密…何百年も職人達が培い受け継いできた技術が隠されているのですね[目][ぴかぴか]

イノシシの肉は私も食べたことがありますが、独特の野生的な味と匂いが印象的でした。食感も力強さがあって美味しかったです。
豚とは互いに違った良さがあって、優劣はつけられません[嬉しい顔]
by 温玉 (2009-12-30 22:01) 

ゆうてん

本当に、勉強になります。[嬉しい顔]
毎度、ありがとうございます。

薬品による殺菌ではなく、細菌を濾過するのですね。
環境にやさしい、いい処理方法ですね。
by ゆうてん (2009-12-30 22:07) 

温玉

【ゆうてんさん】
薬品で殺菌しようとすると今度はその薬品が問題になりますからね。

ちなみに放流が始まったのは今年からで、それまでは草地散布でした。散布の場合、細菌については規制はないので、「膜」の設置は放流のためにかなりの大金[ふくろ]をかけて設置しました。
by 温玉 (2009-12-30 22:18) 

don

2年目にして、すごいですね。[嬉しい顔]
by don (2009-12-31 13:31) 

温玉

【donさん】
全然すごくないですよ~[汗]
でも嬉しいです[嬉しい顔]ありがとうございます
by 温玉 (2009-12-31 14:47) 

温玉

【じょに~さん、まきりんさん、mkさん】
[ハート][ハート][ハート]ありがとうございます
by 温玉 (2009-12-31 14:49) 

温玉

【海都☆さん、紅姫さん】
[ハート][ハート]ありがとうございます
by 温玉 (2009-12-31 20:53) 

shiki

訪問ありがとうございました♪

凄い(笑)
あんな風に分離するんですね!(笑)
by shiki (2009-12-31 21:21) 

温玉

【shikiさん】
こちらこそどうもありがとうございます[嬉しい顔]

「塩析」についての余談ですが、「塩析」は洗濯用の合成洗剤の開発にも関係しています。

日本の水はほとんど軟水(カルシウムやマグネシウムが少ない水)ですが、ヨーロッパではミネラルウォーターの「コントレックス」に代表されるような、カルシウムやマグネシウムを多く含んだ硬水が珍しくありません。

そのような通常の石鹸が溶けにくい地域でも使えるように開発されたのが合成洗剤なのです[嬉しい顔]
by 温玉 (2009-12-31 21:44) 

shiki

おやっと(笑)
欧州の水は硬水なのですか(笑)
だから皆背が高いのかっ!?(笑)
by shiki (2009-12-31 21:48) 

温玉

【shikiさん】
なるほど[!!] じゃあ日本は蛇口をひねれば牛乳が出てくるようにして対抗しましょう(笑)
by 温玉 (2009-12-31 22:32) 

shiki

は、腹を下すし、米がまずくなる!?(笑)←自分は、牛乳の過剰摂取で本当によくお腹を壊します(笑)
by shiki (2009-12-31 22:36) 

温玉

【shikiさん】
はっΣ(゚Д゚;> 牛乳苦手でしたか[!!]

っていうか牛乳from蛇口は過剰でしたね[汗]

んなことしたら、洗濯物を部屋干ししたときハンパない惨劇になりますな(笑)
by 温玉 (2009-12-31 22:43) 

shiki

牛乳は好きです(笑)
けど、飲みすぎ注意みたいなわら
一晩で1L消費はさすがに腹を下しましたね(笑)

臭い(笑)
それは確かに酷い(笑)
けどそれはボールドとかに頑張ってもらうしか(笑)
by shiki (2009-12-31 22:56) 

温玉

牛乳で洗濯し、その臭いを消すために洗剤を投下…

どこまでも不毛な消耗戦ですね[ふらふら]
by 温玉 (2009-12-31 23:02) 

shiki

この上なく、エコじゃないです(笑)
by shiki (2009-12-31 23:04) 

温玉

【かずさん】
[ハート]ありがとうございます
by 温玉 (2010-01-02 20:30) 

コロマロン

とても興味深く読ませていただきました。[嬉しい顔]

縁の下の力持ち的な部署なんですね。
by コロマロン (2010-01-03 15:21) 

温玉

【コロマロンさん】
ありがとうございます。し尿処理をする人たちがいなければ畜産業は成立しないので、まさに「縁の下の力持ち」という表現がぴったりです[嬉しい顔]
by 温玉 (2010-01-03 22:03) 

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